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超大型ファインメットコア採用トランス式パッシブプリアンプ

超大型ファインメットコアで、トランス式パッシブプリアンプをつくろうと思っています。

ことの始まりは、アンプのトランス作り名人、Y・Yさんのちょっとした好奇心だろうと思います。

写真をご覧ください(【図1】【図2】)。巻線が太く、ファインメットコアが大型です。

結果として、まず、コイルDC抵抗分は現行品の1/3に下がっていました。

びっくりです!

【図1】パッシブトランスユニット
【図1】パッシブトランスユニット
【図2】この試作トランスのサイズ比較(脇にあるのは現行ファインメットコア)
【図2】この試作トランスのサイズ比較(脇にあるのは現行ファインメットコア)

スーパーパーマロイコアとファインメットコアとの定性的比較

MASTERSでは、スーパーパーマロイコアによるものとフィンメットコアのよるトランスが用意できます。電気的性能はどちらも最優秀です。

けれども、そのパフォーマンス(音質)はわずかに異なるようです。

パーマロイ系合金はニッケルと純鉄で作られます。

衝撃に弱いので、取り扱いは注意が必要です(磁区配列が乱れる!→リニアリティに関係する)。

一方、ファインメットは鉄・シリコン系合金で、その合金結晶が大きいのが特徴ですが、ファインメットはそのうえで注意深くアニール(焼きなまし)工程を加えて、リニアリティ(ひずみ率も含め)を改善しています。

この部分が日立金属のパテントとなっているようです。

試作の大型ファインメットコアによるパッシブプリアンプを聴く

オーディオは、いろいろ言っても、聴いてみないと始まらないというわけで、これは車でもそうなりますが、こと、サウンドとなると微妙です。

でも、この道に首を突っ込んだ方なら、まずそのサウンドの個性を微妙にとらえることが可能でしょう。

まず、皆さん、CDとアナログレコードの違いはすぐわかるでしょう。

次に、聴く機会は少ないですが、CDとサンパチ・ツートラ(聴く前によく整備する)との違いもわかるでしょう。

もちろん、真空管プリアンプと半導体アンプとの違いも分かるでしょう。

さらに、パッシブプリアンプとの違いは少し訓練がいるでしょう。

そして、もっと、もっと、トランス式パッシブプリアンプになるとどうでしょう(もう、体験の多い日本酒の味比べ以上に微妙と思われます)。

特に、使用する磁性体の組成、製法、コア、コアサイズの選択、最終的には巻線設計がキモと言えるでしょう。

私はプロであり、作り手として、皆様の満足するものを目指しています。

最近、珍しくCD(シェラザード:リムスキー・コルサコフ)を聴いています(もう20回くらいでしょうか!)。ライブ録音盤です。

ラドミル・エリシュカ指揮/札幌交響楽団との熱演は素晴らしいと言われて、購入し、聴き続けています。

確かに演奏はすばらしく、曲が終わったときの観客のどよめきは凄いです。

そして、この大型ファインメットコアトランスで聴くと、聴こえない音が聴こえるように感じるのです。

変な話ですが、札幌交響楽団の楽団員が熱演し過ぎたようで、全体に飛び出しているごく細部が聴こえます。

でも、全体は情報量が増えて、やはり、このアンプは凄くなりそうです。

さらに、ヘッドフォンで聴くと、ひっくり返るほどの情報量の多いサウンドが聴けます。

まずは1台作りますが、スイッチ類もすべてセイデン製を採用しますし、製作が大変なので、頑張っても1桁の限定台数になりそうです。

価格も¥20万は超えます。けれども、世界で誇れるグレイトなパッシブプリアンプ/ヘッドフォンアンプになるでしょう。

このパフォーマンスの凄さは、大型ファインメットコアのマージンとDCR抵抗分の低下と推測します。

参考に、製作しようと考えているこのアンプのイメージデザインスケッチを掲載します(【図3】)。

【図3】イメージデザイン画像(シルバーバージョン。脚・つまみ・端子等の突起物を含まないケースサイズ:330(W)×77(H)×200(D))
【図3】イメージデザイン画像(シルバーバージョン。脚・つまみ・端子等の突起物を含まないケースサイズ:330(W)×77(H)×200(D))


ファインメットコアのパッシブプリアンプへの採用検討

経緯

2015年末、あるオーディオファンの方から、“ファインメットコアで作ったトランスを搭載したパッシブプリアンプを製品化できないか?”という問い合わせをいただきました。

MASTERSのパッシブプリアンプ、CA-777シリーズ(「トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-777N/AC”」,「トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-777NS”」など)、CA-999シリーズ(「バランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBN/AC”」,「バランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBC/O”」など)は評判が良く、サウンド的にも、電気的特性にも優れ、特に新素材コアを採用しようという考えはありませんでした。

熱心に“ファインメットを検討してできないか?”といわれるメールに、私も心が動き、何とかファインメットコアを入手できないものかと探してみました。

製造元である日立金属に当たってみても、ある程度の量でないと購入は難しそうでした。
そこで、トランスコア加工会社を見つけて、その会社でファインメットを入手してもらい、マスターズ向けのコアを入手できないものかと、人脈や、検索をして、探してみました。
ようやく、トランスのタムラと40年前取引していたカットコア加工会社とコンタクトとることができました。

ファインメットコアの入手・試作

さっそく、そのカットコア加工会社にTELすると、社長さんがTELに出てくれました。お話すると、“それなら、少量でも良いから、試作しましょう!”と言ってくれました。
お話を伺うと、コア形状はカットコアになるとのこと。カットコアは磁路がほぼクローズドループになるので、インダクタンスを大きくとれるのでOKと答えました。
けれども、カットコア形状にすることは、ファインメット素材シートをカットコア形状に捲いて、そのあと2分割にカットして、カット面を研磨する手間もかかり、部品コストはかなりアップすると予測されました。
パーマロイコアは非常に高価です。それ以上にファインメットによるカットコア価格は高価な見積りになりました。
そのような状況でも、私は試作することを決意して、少量で申し訳なかったのですが、CA-777シリーズに採用しているトランスコイルに適合する(コア断面積)コアサイズを指定して、CA-777シリーズ2台分のコアを4個注文しました。

年が明けて、2016年2月初旬にファインメットコアが入荷しました。
すぐ、試作しようと焦りましたが、受注残のマスターズアンプの製作にパワーを取られて、試作機を組立て・完成したのが3月末になってしまいました。
なるべく、シンプルにしたかったので、1入力・1出力タイプとしました。
「【写真1】ファインメットコアで作ったトランスを搭載したパッシブプリアンプ試作機」を参照してください。

そのパフォーマンスの評価

電気的特性の、特にコア材の性能が発揮される高調波ひずみ特性を測定しました。

「【図1】MASTERS CA-777Nタイプ 高調波ひずみ率 : コア材による比較グラフ」に示すように、ファインメットもスーパーパーマロイも、極めて低ひずみで、非常に優秀です。但し、低域に関しては、ごくわずかに、スーパーパーマロイのCA-777Nのほうが低ひずみです。どちらも、非常に優れています。

ちなみにオリエントコアと比較してみると、中域から低域にかけて、上記2つのコアに比べてひずみが観測できるのは、オリエントコアは高磁束密度の動作領域では優れているものの、透磁率では、ファインメットやパーマロイに及ばないので、そのような結果になると思われます。

磁性体については、透磁率という言葉がよく出てきます。これは磁界において、磁化特性の鋭敏さを表すと言われますが、オーディオ機器においては、どのような特性に反映するかはあまり解説されていないようです。
透磁率が高いことは、それだけリニアな特性を示すと言っても良いでしょう。その成果は、低ひずみ特性を示すと結論づけても良いでしょう。

ファインメットコアは、低ひずみであり、透磁率が極めて高いですが、パーマロイより高い磁束密度動作領域でその優秀が発揮されるようです。
「【図2】トランスコア材による磁化特性の違い: 概略比較データ」を参照してください。

スーパーパーマロイは飽和磁束密度がファインメットに及ばないものの、その透磁率は低磁束密度領域では透磁率がファインメットより高く、ひずみ特性はもっとも優れた性能を示していると思われます。

結論として、ファインメットはある程度、透磁率が高く、飽和磁束密度も高い、バランスのとれた磁性体と言えます。オールラウンドで優れた性能を発揮する新素材と言えます。
一方、スーパーパーマロイは高い透磁率特性を生かす用途では最も優れた磁性体と言えます。

ヒアリング結果

ファインメットコア試作機

どちらかと言えば、その音調は暖色系、そして繊細であり、分解能に優れ、かつ、迫力があります。エネルギーバランスはフラット感であり、そして低域再現も見事です。広がり感、奥行感も充分です。
オケ,合唱,オペラ,ビッグバンド再生にも充分なパフォーマンスを示しました。もちろん、その静寂感は素晴らしいです。

スーパーパーマロイコア:CA-777N

ファインメットコアと比較すれば、音調はわずかに寒色系、繊細でありその分解能は見事につきます。低域感は、よく聴いてみると充分に再生していると認識できます。広がり感、奥行感の再現が素晴らしいです。
そして、静寂感の再生はトップと思います。どのような高S/N比のアンプでも、このローノイズ感は実現できないでしょう。
ジャズトリオ,ボーカル,室内楽,ギターソロなどの音源には最適でしょう。

オリエント試作機

その音調は、パワフルで、音楽をガンガン聴きたい方には最適です。もちろん、通常のプリアンプよりローノイズで、混濁感のないことはパッシブプリアンプのもっともすぐれた性能です。

結論

通常のプリアンプはノイズ発生に加え、電磁波ひずみの混入問題があり、良いアンプ設計、製作に考慮が必須な事項です。

今回の検討により、ファインメットコア搭載のマスターズのトランス式パッシブプリアンプの製品化を計画致します。ご期待ください。

参考情報

トランス巻線の基本式を載せておきます。
トランスの巻数を決める数式は以下のようになります。
N=E÷(4.44×A×B×f)
但し、N:巻数,E:印加電圧,A:コア断面積,B:最大飽和磁束密度(設計設定値),f:周波数

上記の式から、コアを大きくするか、飽和磁束密度が大きくとれるか、使用する最低周波数を高くできるかすれば、巻数は少なくてすみます。
身近なところでは、60Hz地域では、電源トランスの巻数は50Hz地域に比べて、巻数は少なくてすみます。ですから、世界の大多数の国では、商用電源電圧は60Hzが標準になっています。


ファインメットコアで作ったトランスを搭載したパッシブプリアンプ試作機
【写真1】ファインメットコアで作ったトランスを搭載したパッシブプリアンプ試作機

高調波ひずみ率 : コア材による比較グラフ
【図1】MASTERS CA-777Nタイプ 高調波ひずみ率 : コア材による比較グラフ

トランスコア材による磁化特性の違い: 概略比較データ
【図2】トランスコア材による磁化特性の違い: 概略比較データ


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